プログラミング教育

未来投資戦略 その1

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10月22日に、今上陛下の御即位を国内外に披露する「即位礼正殿の儀」が執り行われました。
それまで強く降っていた雨も途中で上がり、のぞく青空からは陽が差し込むと共に、二重の虹が東京の空に架ったことが話題になっていました。
古来の陰陽道では、このような雨は汚れを落とす浄めの雨であるとし、たいへん縁起の良いものとされているようです。
台風による被害によって、被災地ではまだたいへんな御苦労が続いていますが、令和の御代が22日の天気のように、強い雨から打って変わって陽が差し虹も架るような、そんな時代になればと願う次第です。

では、この令和という時代を、国はどのように見ているのでしょうか。
2018年6月に内閣官房日本経済再生総合事務局が、「未来投資戦略2018」というものを作成しており、これが令和の時代に我国が目指す方向を指し示す、一つのテキストと言えるでしょう。(以下、テキストと表記します)
内容を一言にまとめるとするならば、世界中で進展しているデジタル革命を上手く活かし、従来のライフスタイルを変えていく事で少子高齢化を乗り越えよう、といった感じになりますか。
具体的な内容は広大な分野に及んでいますので、気になるキーワードを少しづつ取り上げ、考えてみたいと思います。

今回は「リカレント教育」です。
このテキストの中でも「人生100年時代に対応したリカレント教育を大幅に拡充する」(14頁)と書かれていますが、さて「リカレント教育」とは、そもそもなんでしょうか。
文科省HPの説明では「リカレント教育とは、学校教育を人々の生涯にわたって分散させようという理念であり、その本来の意味は「職業上必要な知識・技術を習得するために、フルタイムの修学と、フルタイムの就職を繰り返すことである(日本では長期雇用の慣行から、本来の意味でのリカレント教育が行われることはまれ)。我が国では、一般的に「リカレント教育」を諸外国より広くとらえ、働きながら学ぶ場合、心の豊かさや生きがいのために学ぶ場合、学校以外の場で学ぶ場合もこれに含めている。」とされています。
要は「学び直す」ということですね。
ではなぜ、このような話が出てきたのかを考えてみたいと思います。
まず、大きいところで人生の過ごし方という点で考えましょう。
我が国の平均寿命は男女とも80歳を超え世界最高水準となっていますが、男性の明治・大正期におけるそれは43歳、1947年で50歳でした。
今では、全く信じられないような数字です。
また「定年制」は1887年に東京砲兵工廠が55歳としたのが始まりで、これが徐々に標準化されていった訳ですが、当時の平均寿命から考えると、まさに「終身雇用」であったということが出来ます。
この制度は戦後においても引き継がれ、高度経済成長による労働力不足を背景として、大企業を中心として広く定着していくわけですが、平均寿命と定年がほぼ同じであった時代に比べて、寿命の方だけが1.6倍にも伸長した現代の「人生100年時代」において、その頃のライフパターンを未だに踏襲しているというのは、決して合理性があるとは言えません。
例えば元気でさえあれば、20年周期で3回、あるいは30年周期で2回違う職場や職業を経験し、80歳でリタイアするという選択も考えられるのではないでしょうか。
また子育てを大事にしたい女性であれば、子育てが落ち着いてから、40歳から30年頑張るということもあるでしょう。
100年以上前に形成されたライフパターンを見直し、より長く豊かな社会生活を送るために、リカレント教育の拡充がその機会の後押しをしてくれるのであれば、これはたいへん有意な政策であると考えます。

では次に労働需要の点から見ていきたいのですが、テキストには、同じ単語が繰り返し、これでもかといった感じで出てきます。
それは「ICT」「AI」「IoT」「ビッグデータ」「ロボット」など、デジタル革命を押し進めるにあたって、外すことのできないキーワードです。
さてしかし、現実の社会においてこれらを動かしていくのはハードでありプログラムであり、それらを作るのは当たり前のことながら人間なわけですが、特に外すことの出来ないキーワードの分野において、所謂「先端IT人材」が大幅に不足するだろうという予測を経済産業省が出しています。
つまり、未来投資戦略に描かれた未来を実現するためには、対応できる人材を投入できるように育成しなければならないということであり、世界と競い合うためにも喫緊の重要課題でもあります。
さてここで注意しなければならないのは、不足しているのは「先端IT人材」であるという点です。
よく「ITプログラマーの人材不足」という言葉を耳にしますが、実のところは広い意味でのプログラマーの供給は満たされています。
不足しているのは最先端分野であり、また現場においては全体を統括できるような優秀な人材に限定されますので、人材不足という言葉を広い意味で受け取ってはいけません。
この最先端分野は、世界中が競い合う日進月歩の世界で天文学的に巨額の研究開発費が必要ですし、早い段階から専門分野に特化した若い研究者でないと対応出来ないと聞きます。
プロスポーツの世界で大成する人と、似た感じのイメージでしょうか。
そうなってくると世界中から優秀な人材を引っ張ってこられる米国や、国策で突っ走る中国が圧倒的に優位であり、またこれらの人材は急に育成できるわけでもないので、人材不足が懸念される我が国は国際的には苦戦を強いられ、国内的には市場拡大と人材不足のギャップに当面は悩まされて、優秀な人材の争奪戦となるでしょう。
この問題の根本的な解決方法は、若くて優秀な研究者や技術者を育成していくしか方法はなく、この問題が令和の時代の教育において、重要なテーマになることは間違いありません。

しかし別の角度から見てみると、この「ICT」「AI」「IoT」「ビッグデータ」「ロボット」など未来のキーワードを具現化するために必要なのは、決して最先端技術の開発者だけではありません。
優れた先端技術は優れた製品とイコールではなく、社会に広く受け入れられ実際に活用されていくためには、二次三次の加工や細かい工夫が必要であり、これを無くして未来の具現化はありません。
そこで必要となってくるのは、専門特化型ではなく基本技術と市場ニーズを正確に理解し、この双方をマッチングさせて技術を製品というカタチに具現化させていく「工夫できる頭」であり、これには特定分野にかかる豊かな経験値と、複数の分野に広がりのある知識を持つ人が有利です。
つまり最先端分野の開発なら特定分野に特化する必要がありますが、それ以外の実用的分野においては複合的な能力や知識が重要であり、特に技術者である場合にこそ、学び直し、リカレント教育は有効であると考えます。
先述の通り単なるプログラマーなら供給過剰であるけれども、工夫できる頭を持つプログラマー、プログラマーであるが営業センスも鋭い、といった複合的な能力のある人材には多くの活路が広がり、労働需要は高まっていくものと思います。

さてリカレント教育の必要性を、人生の過ごし方という点と労働需要という点から考えてみましたが、「寿命は伸びる・技術進歩は速まる」という単純な、時間的に相反する二つの事実から、少なくとも技術系の社会に生きる方々が長く活躍するためには「学び直し」が有効であるのは間違い無いと思います。
「この道一筋」という言葉に我々は尊敬の念を感じますが、確かに一つの道を探究し、技術や知識を練磨し続けることは文句なしに素晴らしいことです。
特に技術や生産のプラットフォームが安定していた時代や業界ではそうであったわけですが、現在の技術革新のスピードは凄まじく、プラットフォーム自体が様変わりしてしまって、今までのものが陳腐化してしまうといったケースも珍しくありません。
実際に働いている方々の中にも、自分が時代に取り残されていくような不安感を持たれるケースも多いのではないかと思いますが、変わる時代はチャンスの時代でもあります。
そういう時代には、いやそういう時代にこそ今までの貴重な経験値に学び直した新しい知識や技術をプラスすることで、多くの新しい活路が見出せることになるのではないでしょうか。
学び直しによって、持てる経験値を活かし、さらに技術知識を練磨する。
これは立派な「この道一筋」です。
それはまた個人の問題のみならず、我が国が未来を実現するために必要なことなのかもしれません。

ところで我々にも、現在計画中の話があります。
一つはプログラミング学習用ロボット「クムクム」を使った、社会人向けのプログラミング講座です。
そもそもクムクムは、子供達がプログラミングを学びやすくするために「スクラッチ」を使って操作するように設定されているのですが、本格的なプログラミングにも勿論対応していますし、スクラッチで操作するよりも高度な動きをさせることが可能です。
またプログラミングのみならず、電気工学の学習にも最適なように設計されており、これらの特徴を活かした講座の開講を計画しています。
もう一つは、純粋なプログラミング講座です。
クムクムの開発者である吉川氏が、京都大学と共に開発した教育プログラムを利用し、社会人向けの実践的なプログラミング講座の開講を目指しています。
リカレント教育、などと大袈裟なことを申すつもりはありませんが、学び直しをしたいという前向きで意欲のある方々の、御役に立てるような講座に出来れば幸いと考えております。
計画が具体化しましたら、このHPでも広報させていただきます。

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