「ChatGPTに聞いてみたんだけど、全然思ってたのと違う答えが来た」
小学生からこんな声を聞くたびに、私自身は、少しホッとする瞬間でもあるんです。AIに「聞いてみた」という行動はもちろん素晴らしいのですが、「思ってたのと違った」という体験こそが、実は大事な学びの出発点になるのではないかと考えているからなんですね。
AIに正しく指示できる力——プロンプト力(AIへの指示文のことですね)——は、単なるITスキルというより、もっと本質的な力だと私は思っています。「何を、どう伝えれば、どんな結果になるか」を考える能力そのものだからです。これは論理的思考力、語彙力、そして問題を分解して考える力と深く繋がっている、と私自身も感じています。
株式会社ランクアップが2025年に実施した調査では、AI時代だからこそ子どもに発想力や思考力を身につけてほしいと考える保護者が86.0%にものぼるという結果が出ています。さらに、「小学校高学年までに身につけてほしい」と考える割合が最多の38.4%でした(株式会社ランクアップ「子どもの生成AI活用と将来に関する調査」2025年)。
この記事では、AI時代を生きるお子さんの思考力とプロンプト力がどう繋がっているのか、そして、ご家庭でどんな風に育んでいけるのかを、私自身の経験も踏まえてお話しできたらと思います。
小学生のAIプロンプト力って、なんだろう?——論理的思考との関係を一緒に考えてみませんか
プロンプト力とは、AIに対して「何を・どんな条件で・どんな形式で」答えてほしいかを明確に伝える力、と捉えてみてはいかがでしょうか。
たとえば「夏休みの自由研究を教えて」と「小学5年生が家でできる、材料費500円以内の理科の自由研究を3つ、実験の手順付きで教えて」では、AIが返す回答の質がまったく異なりますよね。後者ができるお子さんは、問題を要素に分解し(対象・制約・形式・数)、それを論理的に組み立てて伝えています。これこそ、プログラミング的思考と根っこは同じ構造なのではないでしょうか。
文部科学省が小学校プログラミング教育で育てようとしている「プログラミング的思考」——意図した処理を行うために、どの動きの組み合わせが必要かを論理的に考える力——は、AIへのプロンプト設計と本質的に同じ思考だと私は感じています。つまりプロンプト力を育てることは、プログラミング的思考を日常の中で鍛えることと同義だと言えるかもしれませんね。
小学生がプロンプト力を身につけたら、どんな良いことがあるんだろう?——期待できる変化に目を向けてみませんか
プロンプト力が育ったお子さんに起きる変化を、いくつか整理してみましょう。
変化①:「あれ?伝わらない」から考える視点を持てるようになる
AIが期待と違う答えを返したとき、プロンプト力があるお子さんは「自分の指示のどこが足りなかったか」を振り返ります。これは他者とのコミュニケーションでも同じ思考が働くのではないでしょうか。「相手に伝わらなかったのは自分の表現の問題かもしれない」と考える習慣が、日常の会話や作文、プレゼンにも自然と活かされていくのではないでしょうか。
変化②:目的を先に決めてから動く習慣が身につく
良いプロンプトを書くには、まず「何のためにAIに聞くのか」を明確にする必要があります。この「目的を先に設定する」習慣は、宿題・自由研究・グループワークあらゆる場面で応用されていくはずです。「とりあえずやってみる」から「まず目的を決めてから始める」へと思考の順序が変わっていくのではないでしょうか。
変化③:情報の精度を評価できるようになる、ということ
総務省が2024年度に高校1年生を対象に実施した「青少年のインターネット・リテラシー指標等に係る調査」では、生成AIを「文章の作成をするために使用したことがある」との回答が35.6%で最多でした(総務省「2024年度青少年のインターネット・リテラシー指標等に係る調査」https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000443.html)。
AIを使いこなすだけでなく、出力された情報を評価・検証する力も必要になってくるでしょう。プロンプトを工夫し、結果を比較する体験を積んだお子さんは、「AIが出した答えをそのまま使う」のではなく「本当にこれで合ってるか確認する」習慣が育まれていくのではないでしょうか。
家庭でプロンプト力を育てる実践ステップ——今日から試せる4つの習慣、いかがでしょうか
特別な教材や高額なスクールは、必ずしも必要ではないと私は考えています。日常の会話とAIがあれば、十分に始めることができるのではないでしょうか。
ステップ①:「まず自分で考えてから聞く」習慣を、試してみませんか
AIに質問する前に、お子さん自身が「何が知りたいのか・なぜそれが知りたいのか・どんな答えがほしいのか」を紙に書いてから質問させてみてはいかがでしょうか。このほんの30秒の思考整理が、プロンプトの質を大きく上げることにつながっていくはずです。「とりあえず聞く」から「目的を決めてから聞く」への転換ですね。
ステップ②:「もっとよくなるプロンプトを考えよう」と、一緒に楽しむ
AIに質問した後、「どんなふうに聞き方を変えたら、もっと良い答えが来るかな?」と一緒に試行錯誤してみてください。「5年生向けに書いてほしい」「箇条書きで3つ出して」「具体的な例を入れて」などの条件を加えながら結果を比較する体験が、プロンプト設計の感覚を養っていくことにつながるでしょう。
ステップ③:AIの答えに「なぜ?」と返す習慣を持ってみる
AIが答えを出したとき、そのまま終わらせずに「なぜこの答えになるの?」「本当にそうかな?」と問いかける習慣をつけてみましょう。AIの出力を検証する行動が、情報リテラシーと批判的思考力を同時に鍛えることができるはずだと、私は思います。これはAIに対してだけでなく、テレビのニュース・友人の意見・教科書の内容に対しても同じ姿勢が育っていくものだと思います。
ステップ④:「うまく伝わらなかった体験」を宝物だと捉える
AIが全く違う答えを返してきたとき、「失敗した」ではなく「どこが伝わらなかったんだろう?」と一緒に考えてみてください。この「失敗を分析する」体験こそがプロンプト力の本質的な学びです。うまくいかなかった経験をデバッグ(エラー修正)の機会として活かすことで、改善思考が育まれていくことでしょう。
深掘り①:プロンプト力はなぜ「言葉の力」でもある、と言えるのでしょうか
ここで一つ疑問が生まれるかもしれません。プロンプト力はITスキルなのか、それとも国語力なのか、という問いですね。
その答えは、「両方であり、どちらでもある」と私は考えています。良いプロンプトを書くには、語彙力(条件を言語化する)・論理力(要素を分解して整理する)・文章構成力(適切な順序で伝える)が同時に求められます。これらはすべて、国語力の核心とも言える部分なのではないでしょうか。
東京都教育委員会は2024年12月に「生成AIリテラシー教材」を公開し、児童・生徒が生成AIの特性・注意点・効果的な活用方法を学べる仕組みを整備しました(東京都教育委員会「生成AIリテラシー教材」2024年12月 https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/12/2025122403)。この教材でも、AIへの指示文の書き方が重要なテーマとして位置づけられていることからも、その重要性がうかがえます。
プロンプト力は、テクノロジーの使い方だけでなく「自分の思考を言葉で整理して伝える力」そのものだと言えるのではないでしょうか。これは国語・算数・理科・社会のすべての教科と、人間関係のコミュニケーションにも連動していくものだと思います。
深掘り②:AIを使いこなす子とそうでない子——何が違いを生むのか
AIが日常に普及した今、子どもたちの間でも「AIを使いこなせる子」と「使えるけど使いこなせない子」の差が広まっているように感じています。
この差の正体は、プロンプトの質ではないでしょうか。同じChatGPTを使っても、「宿題を教えて」と入力する子と「小学5年生向けに、なぜ植物は光合成をするのか、理由を3つの段落で、図の説明も入れて解説して」と入力する子では、得られる情報の質と学びの深さがまったく異なります。
IBM Institute for Business Valueの2024年レポートでは、経営幹部のほぼ半数が「自社の従業員にはAIツールを実装・拡張するためのAIスキルと知識が不足している」と回答しています(IBM「AIリテラシー:人工知能のスキルギャップを埋める」2024年)。このスキルギャップは社会人になってから埋めようとすると大きな障壁になってしまうかもしれません。小学生のうちから「AIに正しく指示する体験」を積んでおくことが、将来、大きな差を生む可能性を秘めている、と私は見ています。
実体験:「どう聞けばいいか」に気づいた瞬間
ある体験授業でのことです。小学4年生の男の子が自由研究のテーマをAIに相談しようとして、「自由研究を教えて」とだけ入力しました。返ってきたのは、理科・社会・工作・料理など10種類以上のアイデアの羅列で、「これじゃ選べない」と困った顔をしていたのを覚えています。
「何が好き?どんな道具が家にある?どれくらい時間がかかっていいの?」と私が聞くと、彼は「電池とLEDが好きで、1週間でできるやつがいい」と答えました。「じゃあそれをそのままAIに言ってみよう」と伝えると、返ってきた答えは「電池とLEDを使った光る工作」のアイデア3つで、手順つきでした。
彼は「こっちの方がいい!」と目を輝かせていましたが、実は彼がやったことは、自分の頭の中を整理して、条件を言語化する、というシンプルな思考の整理だったのです。AIに指示するために自分の頭を整理する——この体験こそがプロンプト力の本質がそこにあると、私自身も感じているんです。
「AIに聞けばいい」だけで終わらせると、静かに差がつくかもしれません
今、同じ小学校の同じクラスで、AIを「答えをもらう道具」として使っている子と、「考える道具」として使っている子が並んでいるかもしれません。表面上は同じようにAIを使っているように見えるでしょう。
でも5年後、10年後——自分で問いを立て、条件を整理し、他者に明確に伝える場面が増えるにつれて、じわじわと、その差が広がっていくのではないでしょうか。AIが普及するほど、「AIをうまく使える人」と「AIに使われる人」の差が大きくなっていくことでしょう。その差を決めるのはツールの知識ではなく、思考を言葉で整理する力です。小学生のうちにこの力の土台を作るかどうかが、将来の選択肢の幅を、大きく左右するのではないかと私は考えています。
小学生のAIプロンプト力に関するよくある質問
Q1. 小学生にプロンプトを教えるのは難しくないですか?
「条件を整理してから聞く」という習慣を日常会話で教えるだけでも十分だと私は考えています。「何がほしい?どんな大きさ?色は?」という普段の会話の問いかけが、そのままプロンプト設計の練習になるのではないでしょうか。専門用語を教える必要は、特にありません。
Q2. 何歳からプロンプト力の練習を始められますか?
「自分の気持ちや要求を言葉にする」練習は幼児期から始められることでしょう。AIを使ったプロンプト練習は小学3年生頃からが現実的かもしれませんね。まず日常の会話で「何をどう伝えるか」を意識させることが最初のステップになるかと思います。
Q3. AIを使わずにプロンプト力を育てる方法はありますか?
もちろんあります。図書館の司書さんへの質問・料理のレシピを家族に説明する・先生への質問メモを書く——これらすべてが、プロンプト設計の練習になると言えるのではないでしょうか。「相手が動けるように具体的に伝える」習慣が、プロンプト力の土台になるはずです。
Q4. プロンプトが下手でもAIは使えますか?
使えますが、得られる価値が大きく変わってくるでしょう。「宿題を教えて」でも答えは返ってきますが、そのまま使うことで思考力の発達を阻害してしまう可能性もあるかもしれません。プロンプトを工夫する体験を積むことで、AIとの関わり方そのものが質的に変わっていくのではないでしょうか。
Q5. プロンプト力はどんな将来の職業に役立ちますか?
ほぼすべての職業に役立つはずだと私は思っています。企画・営業・エンジニア・教育・医療——AIが補助ツールとして使われるあらゆる分野で、「AIへの指示を設計する力」が求められるでしょう。特定の職業のためではなく、思考を整理して伝える汎用スキルとして機能していくはずです。
プロンプト力はAI時代の「読み書き計算」——小学生のうちに土台を作る意味を考えてみる
読み書き計算が基礎学力と呼ばれるように、AI時代において「AIに正しく指示する力」は新しい基礎リテラシーになりつつある、と私は感じています。政府が2025年12月に閣議決定した「AI基本計画」では、国民のAI利用率を将来的に8割まで引き上げる目標が明記されました。AIが社会インフラとなる未来において、プロンプト力は特別なスキルというより、日常の基礎能力になっていくのではないでしょうか。
この力は、決して難しい技術の習得だけではありません。「何を・どんな条件で・どんな形で」伝えるかを考える習慣を、小学生のうちから日常の中に埋め込むことから始まっていくものだと、私自身は考えています。
まとめ:プロンプト力を育てるために今日からできること
プロンプト力とは「AIに正しく指示する力」であり、論理的思考・語彙力・問題分解能力が直結する総合的な思考スキルだと私は考えています。保護者の86%がAI時代に子どもの思考力育成を望む中で、その力を育てる入り口は、高額な教材でも特別なスクールでもありません。
「まず目的を決めてからAIに聞く」「聞き方を一緒に工夫する」「AIの答えを検証する」——この3つを日常に取り込むだけで、お子さんのAIとの関わり方が質的に変わっていくのではないでしょうか。
ここまで読んで、もしかしたら少し焦りを感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。それは、もしかしたら正しい感覚なのかもしれません。
難しく考えなくていいです。今日の夕食のとき「今日AIに何か聞いてみた?どんなふうに聞いたの?」の一言から始まります。私たちくむすたでは、AIと共存しながら論理的思考力やプロンプト力を同時に育めるような教材や体験プログラムを提供しています。もしご関心をお持ちいただけたら、ぜひお気軽にお声がけください。お子さんの未来を一緒に考えていけたら、私としては大変嬉しく思います。