出典:平成28年6月10日 IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 (経済産業省)
少し古い情報となりますが、IT人材に不足に関する事情はそう変化していないため、この調査結果に基づいて何回かにわたっていろいろ考えてみたいと思います。
IT人材の不足と学校教育での必修化
上記表から見てもわかるように、我が国のIT人材はどんどん減少する方向です。
そして、この調査結果のトップ(3頁)には表題の注釈として下記のような文が書かれています。
ITは今後も我が国産業の成長にとって重要な役割を担うことが強く期待されており、十分なIT人材を確保することは、これまで同様、今後もきわめて重要な課題であるといえる。
本調査では、こうした問題意識のもとで、IT人材の中長期的な需給動向を展望するとともに、今後のIT人材の確保・育成に向けた方策についての検討を行った。
いきなりなのですが、この文を簡単にかいつまんで解釈してみると『日本が発展するにはITが重要でその人材を作らねばならん!』ということと取れます。
そして、このグラフでは2019年をピークに減少が始まると書いてあります。
ここでふと思い出したいことが一つあります。
ちょうど新学習指導要領がはじまり、小学生にプログラミングが必修とされるのが2020年です。
そして、この年から年々、中学→高校→大学 と必修科目としてプログラミングが取り入れられ、大学センター試験にも「情報」が採用されることが検討されているようです。
しかし、実は中学校での強化の中で、すでにプログラミングや情報といったものはすでに必修化されていて何年も前から教科書に記載されているのですが、なぜまた今頃なのでしょうか?
そして、2020年を機に急に子供たちへのプログラミングを押し付けるかのように世間では大きく取り上げ、多くのメーカーがこの分野に多くの教材を投入してきています。
国を挙げて今から子供にプログラミングを仕込んでおいて国を守ろう!ということでしょうか?
このあたり、4頁目の「調査と背景と趣旨」にしっかり書かれています。
2010年代の後半から2020年にかけて、産業界では大型のIT関連投資が続くことや、昨今の情報セキュリティ等に対するニーズの増大により、IT人材の不足が改めて課題となっている。また、ビッグデータ、IoT等の新しい技術やサービスの登場により、今後ますますIT利活用の高度化・多様化が進展することが予想され、中長期的にもITに対する需要は引き続き増加する可能性が高いと見込まれる。
しかし、我が国の人口減少に伴い、労働人口(特に若年人口)が減少することから、今後、IT人材の獲得は現在以上に難しくなると考えられる。このように、IT需要の拡大にもかかわらず、国内の人材供給力が低下することから、IT人材不足は今後より一層深刻化する可能性が高い。
ITは今後も我が国産業の成長にとって重要な役割を担うことが強く期待されている。こうしたITの重要性を踏まえると、今後も十分なIT人材を確保することは、我が国にとってきわめて重要な課題であるといえる。本調査は、こうした問題意識のもとで、IT人材の中長期的な需給動向を展望するとと
もに、今後のIT人材の確保・育成に向けた方策を検討するものである。
どんなIT人材が求められるのか?
なかなか複雑な事情でのIT人材不足….大人の事情であることは間違えなく読めるのですが、ただ、冷静に考えて、今後ITやIoTやロボットという世界は間違えなくもっと進化し、それに対する人材や知識は必要不可欠なものになることは間違えありません。
そして、ここ最近どんどん進むAI(人工知能)の世界においては、現在、これらに対する技術者は需要は高まるが不足している(数えられるくらいしかいない)状況です。
下記は経済産業省の調査結果の9頁目に掲載されている”AIが必要だ”という数字。
さらにその下には全世界のAI人材の比較表を載せてみました。
AI人材数に関しては人工知能スタートアップ・Element AIが、LinkedInのデータおよびグローバル規模で行われているAI会議のデータを分析結果ということで、LinkdIn (世界最大級のビジネス特化型SNS)の数も入っているので、どのくらい正確性があるかどうかはわかりませんが目安にはなります。
出典:平成28年6月10日 IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 (経済産業省)
※例として、中国IT大手・テンセントの分析では、同社は、世界に約30万人のAIエンジニアがいるが、実際の需要規模は約100万人だと指摘している。
いずれにしても経済産業省の調査結果10頁には注目すべきコメントとして下記の様に書かれています。
将来的なIT関連市場の拡大を実現する上で、前頁に挙げた「ビッグデータ」、「IoT」、「人工知能」等の先端IT技術が重要な鍵を握ると考えられる。
これらの先端IT技術は、今後、産業界を大きく変革する可能性があると指摘されており、今後の活用に向けた期待は非常に大きい。
こうした先端IT技術のサービス化や活用を担う人材を本調査では「先端IT人材」と呼び、その不足状況や課題についても把握を試みた。
本調査で実施したアンケートによると、今後「量」・「質」ともに「特に大幅に不足する」と見込まれる人材は、 「ビッグデータ」、「IoT」、「人工知能」のほか、「ロボット」に関する人材という結果となった。これらの人材のほか、 「クラウドコンピューティング」、「情報セキュリティ」、「デジタルビジネス」等を担う
人材も不足感が強いという結果となっている。
日本ではどのくらいの人材が不足するのか
これは調査結果の11頁目に示されています。
日本でのIT人口不足は2項目あり、その一つがこのIoTやAI人材、そしてもう一つが情報セキュリティー人材と示されています。
直近におけるその数字は下記の通りグラフとして示されています。
合わせて、このグラフに対するコメントにも興味深い。
前頁の結果によると、先端IT人材は、今後特に大幅に不足することが見込まれている。こうした問題意識を踏まえて、今回の調査では、p.14の調査結果から、今後特に大幅な市場拡大が予想される「ビッグデータ」、「IoT」、「人工知能」を担う人材について、アンケート結果に基づき、現在及び将来の人材数・不足数についての推計を行った。
推計の結果、IT企業及びユーザー企業(産業界全体)の現時点での先端IT人材は約9.7万人、現時点での不足数は約1.5万人となった。
2020年までにこの人材数が12.9万人、不足数が4.8万人にまで拡大するという試算結果が得られた。
情報セキュリティ対策を担う人材は、これまでと同様に、今後も産業界全体において非常に重要な役割を担うことが強く期待されている。また、現在は、「情報処理安全確保支援士」制度の創設等、政策的な取組も進められている。2014年7月に、情報セキュリティ人材に関しては、約8.2万人が不足しているとの推計結果が発表されているが、今回の調査では、最新の動向を踏まえ、改めてその人材数や不足数についての推計を実施した。
推計の結果、IT企業及びユーザー企業(産業界全体)の現時点での情報セキュリティ人材は約28.1万人、現時点での不足数は約13.2万人となった。2020年までにこの人材数が37.1万人、不足数が19.3万人にまで拡大するという試算結果が得られた。
出典:平成28年6月10日 IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 (経済産業省)
ここまでのまとめ
世界のIT事情は相当な勢いで動いています。
特に、ロボットやAI(人工知能)の技術はめまぐるしいもので、私たち業界人でも、ちょっと目を離した間に、浦島太郎状態になってしまうことが怖く、多くの情報をとにかく集めてチェックすることが日課となってきました。
そして、日々報道される悲惨な事故など、多くの不祥事も、人間の失敗や欲に絡んだものが多く、機械化されれば一切の問題が相当な数減少することを感じる毎日です。
AIやロボットITがどんどん導入されることで、人間の悪い部分や弱い部分がカバーされ、人間のもつ本当の良いところがクローズアップされ幸せな世界がどんどん構築されていくことはとても嬉しく思えるのですが、しかし何もかもをコンピュータやテクノロジーに頼るということにとても不安を覚えます。
特に、これからの時代の子供たちが、それらを作り上げていく技術者の一人にもなるわけですから、技術を教えるしっかりとしたポリシーを持って臨まない限り、大変な結果をもたらしてしまうことだと心配でなりません。
ロボットと人間がどうかかわりあっていくか、それらを教える中で、人間の良さとやさしさをどう教えていくか?が大人の事情を守りながら必要な子供へのプログラミング教育の課題であると感じます。